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1Q84(No.3) 物語の効力

「そう、1984年も1Q84年も、原理的には同じ成り立ちのものだ。君が世界を信じなければ、またそこに愛がなければ、すべてはまがいものに過ぎない。どちらの世界にあっても、どのような世界にあっても、仮説と事実を隔てる線はおおかたの場合目には映らない。その線は心の目で見るしかない」

「現在」という時は存在しません。「今だ」と思った瞬間に過去になります。時間を細分化し、一秒の何千分の一、何万分の一という風に分解していけば、現在などという単位は存在しません。現在と思っているのは、過去の記憶です。われわれは過去の記憶を呼び覚ますことにより、「現在」を認識しているのです。

「過去」は存在しません。過去は過ぎ去ってしまった時間です。存在するのは現在だけです。しかし、「現在」という時間も存在しません。現在はすでに過去です。時間を一秒の何千分の一、何万分の一と極限まで細分化していけば、「現在」も「過去」も極めてあいまいな概念です。

あるのは記憶だけです。人間が存在するのは、「記憶」の中だけです。ベルグソンが証明したように、人間の脳は、膨大な「無意識」の世界の「記憶」の中から、いま必要なものだけを選り分けて、「意識」しているのです。一人ひとりの人間は、異なったフィルターを通して、異なった世界を見ています。

人は世の中をあるがままには見ていません。人は自分たちをとおして世の中を見ています。一人ひとりの人間は、「ほかの人とは違った」世界を見ています。人はみな、異なった「フィルター」を通して、過去の記憶を呼び覚ましているのです。

ある人は抽象的な「言葉」のフィルターを通して、また別な人は「お金」という数字のフィルターを通して、世の中を「分析」しています。そして自分は幸せだとか、そうでないとか感じているのです。だから心の目で見る「物語のフィルター」を手に入れた者は幸せです。それは想像と、空想と、夢見る「愛のフィルター」だからです。

「心から一歩も外に出ないものごとなんて、この世界には存在しないんだ」

2009/08/30

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